定年後の就労ガイド
団塊世代の退職が注目される理由
団塊世代の退職とは何を意味しているのか?

労働市場を揺るがす、団塊世代の定年退職

日本企業の約9割は定年制度を設けており、その9割は現在60歳を定年としています。つまり、1947年生まれを中心とする団塊世代の定年退職が始まる年 ――それが2007年です。2009年までに500万人以上が定年退職し、全労働力中の8%が失われる、とみられています。さらに、2010年までには累計で110万人が労働市場から遠ざかると予想されており、GDPで実に16兆円のマイナスに相当するとの試算も。労働市場にも、また日本経済にも大きなダメージを与える団塊の大量定年退職が、目前に迫っています。

もちろん、それに対して社会が何も対策を講じていないわけではありません。たとえば2006年4月には「高年齢者雇用安定法」が改正され、企業は、
(1)定年年齢を65歳に引き上げる
(2)定年退職者のうち希望者を嘱託などの形で継続雇用する
(3)定年を廃止する
のいずれかを選択しなければならなくなりました。これを受け、93.6%の企業(厚生労働省調べ)は継続雇用制度を導入しましたが、実態は追いついていません。制度さえ整えれば雇用の実態が伴わなくても罰則はなく、(2)を選んだ企業のうち「希望者全員を雇用する」と答えたのは、ある民間調査では21.7%に留まりました。これでは労働力の減少に対応できず、企業に、そして社会に与えるインパクトはかなり大きいといわざるをえません。団塊世代の大量定年退職は、依然として大きな社会問題のままです。
年齢別労働力人口(2004年時点)
ユーラシア最西端に建つカモンイスの詩碑 ※総務省統計局「国勢調整」、「労働力調査」、「人口推計」から用いた推計値。
■72.8%が60歳を過ぎてからも仕事を持ち続けることを希望(野村総合研究所調べ)
若年新規労働者と高齢退職者数の推移
ユーラシア最西端に建つカモンイスの詩碑 ※総務省統計局「労働力調査」、「国務調査」から推計。
■「時間にゆとりを持ちながら働きたい」が8割を超える(博報堂エルダービジネス推進部調べ)

団塊世代の退職により、日本の労働力が大幅に減少します。

定年後、団塊世代は何をする?

右肩上がりの成長を支え、定年後はそれに見合う年金を手にするであろう団塊世代。旅行業界や金融業界は、新たな顧客層として定年後の団塊世代をターゲットにしたアプローチを開始しています。団塊世代が退職することで、貯蓄もあり、時間を豊富にもった新たな消費層が誕生する、というわけです。

しかし、当の団塊世代は退職をどのように受け止めているのでしょうか。野村総合研究所の調査では、団塊世代の実に8割近くが「60歳を過ぎてからも仕事を持ち続けたい」との回答を寄せています。あるリサーチでは団塊世代の4人にひとりがNPOで働くことを希望している、とのデータも。また、パソナによる 2006年2月の調査では、希望する就業形態は「契約社員」(25.0%)「フリーランス・個人事業主」(23.5%)「独立・企業」(18.4%)となっており、正社員志向はきわめて低くなっています。博報堂エルダービジネス推進部からも、定年後フルタイムで働きたい団塊世代は14.6%で、ボランティアや趣味も大切にしたいとの志向が報告されています。雇用形態にこだわるのではなく、定年後の生活のなかでのびやかに、楽しく社会と関わっていきたい ――そして、そのために「生きがいとして/社会貢献として」仕事を捉えている価値観が見えてきます。マーケットが注目すべきは「消費者としての団塊世代」ではなく、「労働力としての団塊世代」。彼らの高い就労意欲を上手に活用する知恵と変化が、社会に求められているのです。
60歳を過ぎてからも仕事を持ち続けたい(N=500)
ユーラシア最西端に建つカモンイスの詩碑 ■72.8%が60歳を過ぎてからも仕事を持ち続けることを希望(野村総合研究所調べ)
団塊世代が、定年(引退)後に希望する仕事
ユーラシア最西端に建つカモンイスの詩碑 ■「時間にゆとりを持ちながら働きたい」が8割を超える(博報堂エルダービジネス推進部調べ)

定年後の就労意欲は高く、お金よりも「社会参加」、「生きがい」を求めています。

「働きたい」、その意欲をどこへ持っていく?

2007年より大量に市場に放出される、働く意欲をもった団塊世代。では、彼らはその意欲とマンパワーをどこにもっていくべきでしょうか。前述のように「高齢者雇用安定法」が改正され、多くの企業で「定年後も嘱託などの形で雇用する」という選択が、少なくとも制度としては整うこととなりました。しかし、その実態はどうでしょうか。

前述のパソナの調査では、「定年後も今の会社で働きたい」と答えた団塊世代は、たったの12.8%。野村総研による調査でも、「今の会社の人とつながっていたいから働きたい」と答えたのは10.5%に留まり、定年後は多くの人が新しい舞台を求めていることがわかります。また、企業の側からも、シニア層のノウハウや人脈を欲していながら、「定年後、同じ人間関係の中で働き続けることの難しさ」が指摘されています。嘱託などの形で報酬がカットされることへの抵抗、かつての部下と新しい関係を築く精神的負担などが大きい、というわけです。

働く意欲のある団塊世代と、そのマンパワーを必要としている企業。しかし、両者ともに「新しい出合い」を求めている、というのが現実です。しかし、そのマッチングのための受け皿を、企業や社会が用意できているでしょうか。たとえば公的機関が運営する高齢者の再就職支援機関は、「人材派遣ビジネスになってはいけない」というタテマエがあるため、紹介する仕事の内容や雇用形態に制限が出てしまいます(*注1)。しかも、野村総研の調査では、「これまでの知識や経験を生かす仕事をしたい」51.0%に対し、「これまでの経験を生かすことにこだわらない」派が 44.4%、「これまでとまったく異なる分野を」派が4.1%と、新たなチャレンジを希望する団塊世代も多数。働く意欲をもった団塊世代と、団塊世代のノウハウを欲している社会。そのマッチングをするシステムの必要性が、これまでにないほど高まっています。

(*注1) 「団塊世代のノウハウを社会に還元する」という名目のため、「社外に営業活動に出てしまうと、知識や経験を後進に分け与えることができない」と、営業等の職種の紹介は公的機関によっては請け負っていない。

再就労希望者も、受け皿もある。その両者のマッチングが重要課題。